2007年2月のエントリー 一覧

財団法人経済広報センターが発行する「経済広報」2月号の特集は「ウェブ2.0時代の広報」です。
この特集の中で、広報のオーソリティである千葉商科大学の藤江俊彦教授が「ブログ時代の新たな広報の概念と在り方」という文章を発表されています。
ウェブ、ブログといった類のものに関して詳しいほうではないと思われる(失礼!勝手なイメージです)藤江教授なのですが、この文章で示されている「新たな広報の概念」はなるほどと手を打ちたくなるほど明快であり、的確です。

要旨を挙げますと、

  1. ウェブ2.0は単なるメディアの技術的進化やチャンネル数の増加を指しているわけではない。

  2. ウェブ2.0は人々の環境認知の在り方に変化をもたらしており、広報の概念にも影響を及ぼしている。

  3. パブリックリレーションズの対象には"公衆"だけでなく"個人"も含まれるようになった。

  4. ブログ時代の広報においては企業は一方通行のイメージコントロールではなく、"個人"との対話を行わなければならない。

  5. ウェブ2.0時代の広報には"個人"とのコラボレーション型のリレーションづくりが求められる。


のようになるのですが、もうこれはまさに僕がいろんなところで言ってきたり、ブログで書いたりしてきたこと!
僕が常々考えていることを藤江教授のような偉い方も考えていたのかと思うとなんだか鼻が高い気分です。

この中で藤江教授が特に多くの分量を割いて解説しているのが3.なのですが、この部分はこのままでは少しわかりにくいかもしれませんので、ちょっと引用を。

米 国で使用されるようになったといわれる「パブリック・リレーションズ」は、公衆との関係づくりを原義としている。公衆概念は社会学的解釈によれば、マスメ ディアによるコミュニケーションによって、日常的生活空間に散在した人々が共通の情報と関心で結ばれていることを前提としている。パブリック・リレーショ ンズやパブリシティーが、近代マスメディアによるコミュニケーションを主たる活動にしたのは、社会における人々を"公衆"概念でとらえていたからである。


ふむふむなるほどー。
もともとのパブリックリレーションズの対象てのは「マスメディアを通した情報でつながっている人々="公衆"」だったのですね。
だから現在でもマスメディアリレーションズ活動がパブリックリレーションズの中で大きなウエイトを占めているわけなのですね。

ブログやSNSの拡大により、個人とPR主体である企業とが、直接メディアを通して会話・ディスカッションし、忌憚なく意見を述べる場ができた。


ここで言うメディアというのはブログやSNSのことなのですね。
これはよく言われることですね。

広報、パブリック・リレーションズが概念的変革を迫られているのは、すでにアナログのマスメディアによって意識された"公衆"だけが対象ではなく、常にブログなどのネットに参加・発言し、会話する自律的な個人も含まなければならないからである。


つまり、現代の広報、パブリックリレーションズにおいては"公衆"と"個人"の両方を対象にしなければならず、"公衆"リレーションズはマスメディアリレーションズ活動によって、"個人"リレーションズはインターネットメディアリレーションズ活動によって行いなさい、とこういうことですな。

これはまさにその通りですね。

現在のパブリックリレーションズ界はこの辺のことをごちゃごちゃにしてる感じがあるので、この辺で明確に切り分けるのもよいかもしれないですね。
対象によって手法を切りかえるというのは当たり前のことです。


...とまあここまでの藤江教授説の紹介だけで終わってしまってもよいのですが、最後にちょっと僕なりの補足を。

確かに、対象を"公衆"と"個人"に切り分け、そのそれぞれに対して異なったリレーションズ活動を行うというのは大切ですし、この考え方にけちをつけるつもりはないのですが、これにもうひとつ大切な視点を加えるべきだな、と思うわけです。

藤江教授説では"公衆"と"個人"とを明確に区別していますが、結局のところその実態は同じものだ、ということを忘れてはならないような気がします。
つまり、広報、パブリックリレーションズの対象である"社会の人々"はみな"公衆"と"個人"という2つの側面を持っている、ということです。

で すから、マスメディアリレーションズ活動を通して"公衆"との関係づくりを行う際にも、その"公衆"が"個人"の側面をもっていることを忘れてはならない ですし、インターネットメディアリレーションズ活動を通して"個人"との関係作りを行う際にも、"個人"が"公衆"としての側面を持っていることを忘れて はならないと思うのです。

ようするに僕が言いたいのは、対象を切り分け、手法を切り分けて整理することは大切だけど、マインドまで切り分けちゃダメでっせ、ということなのですけどね。
マスメディアリレーションズとインターネットメディアリレーションズを切り分けた結果、そのそれぞれでバラバラなメッセージを発信しているなんてのは愚の骨頂。
その両方の底に流れる、統合されたマインドが必要なのです。

なーんて偉そうに言ってますが、まとめてみると普通のことでした。失礼。
米国の方に「日本のSNSの状況」というテーマでお話しさせていただく機会がありました。

米国の方向けということですので、「mixi1強の日本でMySpaceはどのようになっていくのか?」「Second Lifeは日本でも普及するのか?」といった米国と日本の比較が話題の中心となりました。

内容はそれなりにご満足いただけたようで、質疑応答コーナー(?)も大いに盛り上がり、SNSに限らず幅広い分野についての質問をいただきました。
ということは、あの例の質問も当然出るわけです。

「日本ではGoogleではなくYahoo!が人気だが、これはなぜか?」

キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!!

難しい質問ですね。
僕はこの質問に対して、「これはまさに今日本のブロゴスフィアでホットな話題であり、様々な見解がある」とした上で次のように回答しました。

1.日本人は慣れ親しんだものから新しいものに"乗り換え"ることをリスクと考える傾向がある。
2.Googleのシンプルなトップページデザインは日本人になじまない。


1.に関してはまさに「mixiとMySpace」のところで話した内容と同じでした。
日本人は「今の日常が明日も続くこと」を何よりも素晴らしいことだと考える傾向があるため、新しいものがどんなに良いものであろうとも、あまりそれに"乗り換え"たりはしないと思われます。
新しいものを導入することによって、日常がより素晴らしいものになることがわかっていても、日本人はそれを「今の日常の破壊」であると考え、それを行わない傾向があると思います。
は るか以前に作られた現実的でない、それによって生活を脅かされるような重大な欠陥のあるルールの改正を躊躇したり、若者が社会で発言権をもつことを嫌った り、あるいは新聞社がインターネットに対する執拗な誹謗を行ったりというのも、すべてこの日本人の性質のせいでしょう。

ですから、mixiからMySpaceに"乗り換え"る日本人はあまりいないと予想できますし、Yahoo!に慣れ親しんだ日本人がGoogleに"乗り換え"ることはあまり起こらないのです。

この話をすると聞いていた方々は「オー、なんてことだ!」「シンジラレナーイ」という反応を見せたのですが、これは印象的でした。

2.に関してはさらに3つの内容にわけることができます。

ひとつめは単純にITリテラシーの低い日本人の多さからくるのでしょう。かつてのGoogle検索(ロボット検索)とYahoo!検索(登録サイト検索)の違いをあまり理解していなかったため、
「Yahoo!のトップページ=Googleの検索ボックス+Yahoo!トピックス等のコンテンツ」
という理解の仕方をしてしまう日本人が多かったということでしょう。

ふたつめは「小さな場所に様々なものを収納する」ことをよしとする日本人の気質からくるものです。
狭い家に住み、満員電車で体を密着させあいながら通勤する日本人には、検索ボックスがぽつんとひとつだけ設置されているGoogleのトップページはなじまないのかもしれません。
Yahoo!は検索ボックスだけでなくいろいろな情報が1ページの中に掲載されており、幕の内弁当みたいなお得感があります。
日本人にはGoogleの検索ボックスの周りの余白は「無駄」に思えてしまうのです。

狭いところで生活している日本人には「大より小」というのは「MySpace」のところでも話題としてとりあげました。
僕はMySpaceは日本ではあまり普及しないと予想しており、この会議の前半でもそう言ったのですが、その理由として日本人が使用しているPCと米国人のそれとのスペックの違いを挙げました。
広いところに住んでいる米国人はデカくて高性能なPCを使用することが多く、そのようなPCではSecond Lifeの3D動画をサクサク動かすことが可能です。
一方狭いところに住み、デカいPCを買えない日本人はラップトップ型のPCが大好きです。でもラップトップ型のPCではSecond Lifeの動画がスムーズに動かせなかったり、そもそも利用できなかったりします。
日本人にはデカいPCでないと動かないSecond Lifeよりもラップトップやさらに小さい端末―そう、ケータイで動くSNSのほうが合っているのでしょう。

この回答には皆さんなるほどと納得されていたようです。

そして最後にみっつめ。
それは指示や案内がないと動けないという悲しい日本人の習性です。
「好きなようにしていい」と言われたときに何もできなくなるという日本人の悲しい習性についてはどこかで耳にしたことがあるという方がほとんどでしょう。
そしてGoogleのトップページはまさにこれです。
検索ボックスがぽつんとひとつだけあるGoogleトップページはその検索ボックスひとつであらゆる情報が手に入ることを示しています。しかし日本人はそれだけでなく、それをどう使えばよいのかという指示がほしいのです。

それに対してYahoo!の検索ボックスは丁寧に指示と案内を出してくれます。
不親切な検索ボックスだけでなく、あれも、これも、いろんなリンクを最初から用意してくれています。

Googleが「検索ボックスに好きな言葉を入れてください。」というばかりで何もしてくれないのに対し、
Yahoo!には「検索ボックスに言葉を入れてもいいですが、別ににそうしなくても、こんなのもあんなのも用意してますよ。なんならあんなこともしてみます???」
みたいな親切さがあります。
こちらのほうが指示待ち日本人には向いています。

・・・とこういうことを回答すると、その場にいた方々は不思議そうな顔をしていました。「意味わかんねー」「それ親切じゃなくてうぜーだけじゃん」というようなことをつぶやいた方もいました。
イヤ、このみっつめについては僕も全然意味わかんないので解説のしようがありません。すみませんでした。

そのほかにもいろいろあるのかもしれませんが、僕が思いついたのはこんなところでした。
なんだか日本人の悪口みたいになってしまいましたが、これらは裏返せば日本人の美徳とも言えるはずです。
当たり前のことですが、米国人と同じ考えであることが良いことで、違う考えであることが劣っているということではないのですからね。
Googleを選ぶ米国人とYahoo!を選ぶ日本人、性質が違う者同士で仲良くやっていけばよいのです。
(完全に余談ですが、ある人によると「性質が違う者同士は仲良くできない(だからみんな横並びであるべきだ)」という考え方も日本人の性質のひとつだそうです。)

ところで、僕は普段の検索にはいつもgooを使っています。
めんどくさがりの僕にはクリック数が少なくてすむgooが使いやすいのです。
のであります。

日本の世間一般で言われているような「ホームページ」が実は誤用であるというのはよく語られる事実ですが、この誤用の大き な問題点のひとつに「ホームページ」があるひとつの言葉の言い換えによる誤用ではなく、「ホームページ」というひとつの言葉で「ウェブサイト」「ウェブ ページ」あるいは「ウェブ(インターネットも?)」などという複数の言葉の言い換えになってしまっている、というものがあります。
ウェブページも「ホームページ」、ウェブサイトも「ホームページ」、ウェブも「ホームページ」という感じの誤用です。

こういった感じの誤用はいままで広く行われてきており、まあそれはそれでいいか、と個人的には思うのですが、最近少々厄介な現象が起こりつつあります(僕の周りで、だけなのかもしれませんが)。
それは「ホームページ」という言葉と「サイト」という言葉を使い分ける人々の登場です。
彼らがどういうものを「ホームページ」とよび、またどういうものを「サイト」とよんでいるのかわからないため、これがまた少々厄介なのです。

わからないものは当事者に聞け、ということで、今回は当事者にヒアリングを行いました。
今回ご協力いただいたのは当事者のTさん。わけあって職業、性別などはひみつです。
サンプル数1名という頼りないヒアリングですが、結果は以下のように!


僕(以下b):Tさんのいう「ホームページ」とはどのようなものですか?
T氏(以下T):インターネットの画面に出てくるやつ。

b:では「サイト」とはどのようなものですか?
T:わからないけど大企業とかがやってるサイト。

b:あなた今サイトの説明の中で「サイト」という言葉をお使いになりましたよ!
T:うるさいなあ。

b:では、「サイト」は「ホームページ」の一種であるというお考えなのでしょうか?
T:考えたこともない。

b:ではズバリ「ホームページ」と「サイト」の違いとは!?
T:「ホームページ」は自分で行くことができるところで、「サイト」はIT企業が作っているホームページ。

b:じゃあやはり「サイト」は「ホームページ」の一種なのですね?
T:君がそういう聞き方をするくらいだから間違ってるんだろうね。

b:イヤ、間違っているとかではなくてあなたのお考えを。
T:「サイト」はちょっと生意気な感じ。


なるほど。
これではよくわかりませんね。
なのでここで質問の仕方を少し変えてみます。

b:では『Google』は「ホームページ」でしょうか?「サイト」でしょうか?
T:「サイト」。

b:そうですか。では『2ちゃんねる』は?
T:これは「掲示板」。


!!!!!
これはちょっとヒントかも!?

b:『Yahoo!JAPAN』は?
T:「ホームページ」。


!!!!!!

b:『ガチャピン日記』は???(画面を見せる)
T:これは「ブログ」だ。


!!!!!!!

b:『アサヒコム』は?
T:「サイト」。

b:『J-CASTニュース』は?
T:「サイト」。

b:『CNET Japan』は?
T:よくわからん。

b:では『サントリー』は?
T:「企業ホームページ」。

b:「企業ホームページ」は「ホームページ」ですか?
T:そうなるね。


この辺でぴーんとひらめきましたよ。

b:『大塚製薬』は?
T:これも「企業ホームページ」

b:ではコレ(『ポカリスエット 水の国』)は?
T:「ホームページ」。

b:ところで綾瀬はるかは好きですか?
T:かわいいよね。

b:じゃあコレ(『ポカリスエット イオンウォーター』)は?
T:「ホームページ」。

b:コレ(『ポカリスエット イオンウォーター』内の「どうして"イオン"なの?」)は?
T:ここまでくると「サイト」。


!!!!!!!!!!!!

b:ここまでくると、ですか!!?
T:よくわからんけどね。


ははーん。
わかりましたよ。

この人(Tさん)は適当に答えている!!!!

でもなんとなくわからんでもないです。
T さんの中では「ホームページ」「サイト」のほかに「掲示板」や「ブログ」そして多分「mixi」なんかも同列のものとして存在していて、「ホームページ」 「サイト」は「掲示板」「ブログ」「mixi」などのジャンルに当てはまらないウェブページのうち、Tさんにとって身近かどうかで決定されている、ような 気がするようなしないような。

というわけで厄介な現象は厄介なままなのですが、なにかのヒントにはなったやらならぬやら。
人の良いTさんのご協力をもちまして上のような結果が出ましたので、どなたか分析をよろしくお願いいたします。

(インタビューの文言は実際のものとは多少異なりますが、大体このような感じです)

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